ペズゥ
小原あき

玄関のチャイムが鳴ったので
仕方なく立ち上がろうとしたら
背中の上に
重たい鳥が
止まっていた

「どいてくれますか?」
黄色の羽根を
ぱたり、と閉じて
ずん、と居座る
「私は止まり木ではありません」
顔は見れないけど
その眼はきっと
ドアの向こう

「出たいのですが」
背中をぎゅっと掴まれた
捕らえられた獲物だ
「私は食べられませんよ」
冗談を言った
くくくっ、と
黄色の鳥が鳴いた


(訪問者はきっと、あなたを必要としていない)

頭のなかに
つん、と入ってきた

黄色の鳥が飛び立った

ドアの前に
つ、と降りると
煙と共に消えた


はっ、として
慌ててドアを開ける
誰もいなかった

まるで神隠しのようで
ふゅー、と
風が部屋に入り込んできた


それが出会いだった
黄色の鳥は
私の部屋のチャイムが鳴ると現れる

そして、訪問者を
一人ずつ食べ尽くして
今では
ひとつの部屋を占領するほどに
大きい

背中に乗られると
潰れてしまうので
今ではベッドに
来てもらう


ペズゥ、と名付けた
昔飼っていた
黒猫の名前だ
ペズゥはいつか
床を踏みぬいてしまうだろう


いつか私は
ペズゥに乗って
誰もいない鳥かごに
飛んでいく






自由詩 ペズゥ Copyright 小原あき 2007-07-17 17:06:53縦
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