hibiki
はらだまさる






  くろ、ぼくら くろになる やまどりと まつばやしが 
  よるに のまれて しずみ ささやく 「いいか、めを その高音域の 大きな歌が
  とじる かんかくを きく そらすな、かがやくものが 僕には 全く聴き取れない
               それじたいが くだけちり 
  ぼわん、と うみがすこし すいこまれて くろになる 滅びるための 二十世紀の
  やこうちゅうで ひかった みなもから めをそらすな エレクトロニクスの結晶が
  あかしおだと しらないで ねつと りんりのふはいと 最も遠くで 重なってゆき
  はしゃぐ やかんせんすい ぶんかそうたいの よどみ それぞれに響き 消える音
               しろとくろ みぎ、ひだり 
  ひかりおわった そのあと にしからひがしに ならべ 濡れたトラが、処理される
  ぼく/せかい も くろに ゆびではじかれ めくられ 感じたことのない 喪失で
  きょうかいが なくなって やぶかれたいのりに にた 痛みからも 遠く断絶した
  においやおとや、おんどや ぜつぼう、くもがちぎれて 
  けしきも くろい、そらが せいせいした おんがくが 水や、木から 遠く離れた
  うたが ゆうやけがちって しゅうえんを むかえる、 音に ぼくは羊水を 匂う
  せかいは しあわせそうに ぼくらに とらえられない 快楽と 酩酊のバランスが
  ひとつに くろに なる、 そのしゅんかんから めを 
               そらすな」 と、ささやく 

  夏、ぼくらはブルーベリーを頬張って左手で千歳緑の喘ぐ点描画を描く。天然酵母の
  パンを焼く。全粒粉、胡桃、レーズン、玄米粉、イチジク、クコの実、煎り大豆。窯
  に入れて、大量にスチームする。アントシアニンで染まるまで、ぼくの世界は平面だ
  った。焼き上がったばかりのパンは、パチパチと鳴く。

  東寺に木霊する、ピアノ。
  Michael Nymanの、ピアノ。
  反復と動的な旋律と、ポエジー。
  人間の歩幅で奏でる感情。
  暴走族と、ぼくら。
  騒音と、ピアノ。
  恥ずかしさ、
  悔しさ、                   遣る瀬無さをも吸いこんだ、黒。
                  黒のタキシード。そして赤い靴下。あたたかい。
                     ぼくらは、今夜もたった一つと抱き合う。


  「それが地上の楽園だ。」と、顔のない世界では老成だが年齢不詳の少年が、爪を噛
  みながら、ぼくらの耳に届かないくらいの小さな声でこぼすと、世界は白々しく耀き
  出し、空が跡形もなく黒に燃え尽きる、サウンド。









自由詩 hibiki Copyright はらだまさる 2007-07-10 21:01:20
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
Double image