透明な朝に
マッドビースト


 葉はどれも光っていた

 雨粒は露になって残り
 雲の向こうの空のずっと高い向こうの
 姿の見えない太陽の光を集めていた

 雨あがりの空気は澄んでいる
 埃だとかスモッグだとか
 日ごろ纏わりつくいやなものは湿って
 地面に転がっていた 

 空気は
 耳の中から入ってきて
 僕を冷やしてくれる
 昨日の夜の思い出もきれいにしてくれる
 どうしてあんなに焦っていたのだろう

 どうせ雨なのだからと思って
 鳥もまだ眠っている
 休日の人ならなおさら

 なんの音も聞こえないこの透明な朝は
 僕だけのものだ

 光ながら表情を変える露が
 音を出さないのが不思議だった
 
 
 と、
 何処かでゆっくり窓がサッシを滑る音がした
 蟻が一匹 葉の上を動き回っているのを見つけた
 今日も世界がシェアされ始めた
 
 葉の上のプリズムを撫でてみた
 冷たい
 それは感触だけのこして崩れて流れた  
 きらきら光ながら
 
 予定には早かったけど
 ずっと向こう
 見えないなにかを集めて
 短い今日を光るために
 僕もでかけようとシャツをとった
 


自由詩 透明な朝に Copyright マッドビースト 2004-05-16 12:47:04
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