じゃんけん
たもつ


つぶれたステーキハウスの駐車場に
制服を着た男の子と母親らしき人が立っていた
二人でじゃんけん遊びをしていた
昨日も同じところにいるのをバスから見た
違う遊びを楽しそうにしていた
毎日あのように園の送迎を待っているのだった
一昨日は見なかった
同じ時間に同じ場所にいたのかもしれないが
それを見ている自分がいなかった
喪服を着て違う方面へと向かうバスに乗っていた
その夜は妻に葬儀の話を少しした
特に知っている人でもなかったので
妻は、お疲れさま、とだけ言った
もうその話をすることもないだろう
もししたとしても
平等にやってくる死と同列に並べられ
もはや誰の葬儀かもわからなくなっているのだ


自由詩 じゃんけん Copyright たもつ 2007-06-29 13:16:29
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