ハルジョオンとヒメジオン(親指1000字エッセイ)
佐々宝砂

ハルジョオンとヒメジオンは両方とも正しいとはされない呼び方だ。正しくは、ハルジオンとヒメジョオン。ヒメジョオンは、ちいさな女苑の意。女苑は中国産の野草。また、紫苑の一種姫紫苑(ヒメシオン)と区別するために姫女苑と言うらしい。ハルジオンは春紫苑と書いてそれでよしだ。春に咲く紫苑という素直な意味である。

ヒメジョオンは夏から秋に咲く。ハルジオンは春から夏に咲く。両方が一度に咲いている時期は真夏のいっときだけだ。私の庭にはハルジオンが咲く。ハルジオンは青ざめてうなだれて咲く。

私はハルジオンという呼び名に慣れない。どうしてもハルジョオンと言ってしまう。それはもしかしたら松任谷由実のせいかもしれないが、彼女のせいばかりでもない。私の母親は、春に咲くのがハルジョオン、秋に咲くのがヒメジョオン、と教えてくれた。

ハルジョオン、ヒメジョオン、
ハルジオン、ヒメジオン、

綺麗に脚韻を踏むと、どっちかが間違った呼び名ということになる。好きな呼び名を使えばいいんじゃないかな、正式名称ではない、ふたつの花を並び称して歌うための呼び名だということを知ったうえで。


散文(批評随筆小説等) ハルジョオンとヒメジオン(親指1000字エッセイ) Copyright 佐々宝砂 2007-06-20 20:09:07
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