少年とナイフ
虹村 凌

闘争本能が叫びだす夜
僕達は道端に捨てられた大きなタンスに逃げ込んだ
しばしの雨宿り
落とした鍵が車に轢かれて潰れている

仲間達は今夜家出の計画を立てないままに
今にも遠くに行ってしまいそうでした
手がかりになるのは街頭と電話ボックスの明かりだけ
川面に浮かぶ桜はただ流れていくだけでした

戦いたい少年は
自らを戦闘に追い込む為にナイフを持つ
武器を持ったら戦わなくちゃいけない
赤テープも白テープも要らない
こっちの仁の為にあっちの義にナイフを突き立てる
値段も知らないナイフは使い方もわからなくて
何時までも手に馴染まない
誰かの手垢
こびり付いた血
こぼれた刃
緩んだネジの所為でもう畳めないナイフは
ポケットにも収まらない


自由詩 少年とナイフ Copyright 虹村 凌 2007-06-16 13:56:32
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