おっぱい(地)
渦巻二三五

外から帰ると乳房がつめたい
それは脂肪のかたまりだからだ
血の通わない、けれども
ゆたかに潤し育むことができるふくらみ

「脂肪のかたまり」と呼ばれた女は
蔑まれながら
馬車のなかで飢えた人々に
惜しみなくパンを与え
けれどもその身に通うあたたかな血は黙殺され

今は、渡り鳥も渡らない鳥も
子育ての真っ最中
鳥の胸は筋肉だ
はばたくための筋肉でみっしりと堅い
鳥の胸は血の熱がこもっている
鳥の親は胸をひらく代わりに口をひらく

美しい胸を見よ
人もけものも
その奥にこそ血の源がある


自由詩 おっぱい(地) Copyright 渦巻二三五 2007-06-07 11:59:29
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