創書日和。風 【一目散】
佐々宝砂

一道の暴風、屋を壊り、天井床畳をさへ吹上、
あるひは赤金もておほへる屋根などもまくり取離ちたり。
              『閑田次筆』(伴蒿蹊)


一目散に過ぎてゆく風、風、
違う、過ぎてゆくのは風じゃなくて、
あれは、

一筋に過ぎてゆく、
脇目もふらずに、
吹き上げられる石ころ、バケツ、トタン屋根、
なんなんだよあれは!

ダウンバースト?
竜巻?
乱気流?
違う、あれは、
一目散に過ぎてゆくあれは、

一つ目に一本足の、
鍛冶の神、
その末裔、

あいつの名は一目連。
鎌鼬とも違う。
あいつは人を切り裂かない。
ただ、すべてを吹き上げて、
ごちゃまぜにして、
めちゃくちゃにして、

一目散に過ぎ去ってゆく。


自由詩 創書日和。風 【一目散】 Copyright 佐々宝砂 2007-05-31 21:36:03縦
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