五月考
嘉野千尋



  両手に抱えられるだけ
  かなしみを抱えて
  捨てに行く
  穴を掘って
  花壇の真ん中辺りに
  ここなら寂しくないでしょうと
  ささやきかけて
  そうしたら
  捨てられるかなしみが
  もういいよ、と
  答えたので
  ごめんね、と返して
  土をかけた

  
  次の日にはもう
  綿毛になっていたかなしみが
  風に吹かれて飛んで行った
  飛んで行くかなしみが、
  ごめんね、
  と言うので
  わたしも、
  もういいの、とだけ
  答えた


  蒲公英の花が一輪だけ、
  日向で風に揺れていた



自由詩 五月考 Copyright 嘉野千尋 2007-05-28 19:15:11
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