ヤマグチさん
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後ろすがた かわらないね
しゃんとせんねって
相変わらず 美人だね
中洲の女王やもんね
ひさしぶり
俺は元気
左の奥歯がひとつ欠けちゃって
すこしは老けたって言われるよ
おばあちゃんはすっかり前歯がなくなっちゃったね
だけど笑顔もずっと素敵だよ
ふるえる指で握手するのは
おばあちゃんの得意
洒落たあいさつ
いつまで経っても
若いんだ

きょうも暑かね
うん、えらい蒸す
そういえばこんな暑い日
商店街でみんな一緒にビール飲んだっけ
みんなはパパになったりママになったり
どこかにいったきりいなくなったりしたよ
おばあちゃんはずっと博多やね
進駐軍を向こうに張ったチャイナドレスで踊った話
白いベンツは誰が乗ってたんだっけ
みんな忘れちゃった?
それなら手をつなごうよ
俺はおばあちゃんの息子じゃないけど
それでもいいね
どちらさま なんて笑って
ゆっくり歩こう
もうすぐ梅雨だね

先生は正月二日だったよ
おばあちゃんと先生いつも取っ組みあってて
いや、おばあちゃんの一方的なお仕置きだったかな
先生はおばあちゃんにひっぱたかれると
おっきなからだを子どもみたいにすぼめて
こんにゃく食ってた
なつかしいね
俺はとっくに別れちゃったよ
あはは、俺はかまわないよ
酔っぱらったら一緒にねむろうか
おばあちゃん つめたくって
心臓もゆっくりだって
サユリが言ってた
そういえばサユリはどうしたの
美人のシャム おばあちゃんの
そっかそれなら打ち明けるけど
俺、サユリと付き合ってたんだ
聞かせて おばあちゃんの心臓

鏡はぜんぶ棄てたんだね
気のはやい旅支度だね
階段おんぶで降りるから
また当たらない占いもしてね
街もずいぶん変わったけれど
空や雲はあの頃のまんま
ようやくこの星を一周旅してきて
きっと、ずっと、おばあちゃんと一緒にいたいんだよ
しばらくここで暮らすってきめたから
俺もまわるよ
だから俺のこと忘れてもいいよ
ほんとうは知っているの 知ってるから
思いでをそっと燃やしている
あったかいほのおに
おばあちゃんはつつまれて
俺もつつまれるよ

じゃがいもおいしいね
抹茶ようかんも持ってきたよ
照れたあくびも、隠さないところもかわらないね
おばあちゃん、背中にはねがはえてるよ
まだはえそろってないけれど
いつかおばあちゃんが羽撃く日は
きっとみんなが振り返るよ
つめたい雨がふる朝だね
約束するよ
そばにいるから
背中もおしてあげるから
安心して なにも残さなくていいよ
散らばったはねは集めて川に流すから
いろんなことを忘れて
あとすこし歩こうよ
ゆっくりゆっくり海まで歩こう






自由詩 ヤマグチさん Copyright soft_machine 2007-05-25 23:40:28
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