メルティング・ポイント
たりぽん(大理 奔)


夜が季節の名前ならば
今夜は惜春
雷雨が迫る黒雲
まだらに明るい空を映して
海が水銀のように揺れる
指先の温度が融点の
あなたという液体
わたしという液体

いつまでも
満たされないのが海だ
欲しいほしいとうち寄せては
手がかりもなく砂を
掻きとっていく
海鳥が笑う
満たされようともしない空を
旅する者だから

季節の名前の雨が
時折に呼びさます
スティールドラムのように
あちこちを叩いては
余韻だけを響かせて
優しさを失うと
ほら、音速で空気が裂ける
稲妻で

立ち尽くすからだは
季節ではない名前で呼ぶ
頬や指先が
液体で濡らされても

胸の融点は遙かに高く
頬の温もりをさぐっても
秘密は秘密のまま
指先から
融かされていく

それが
今夜のあなたの名前





自由詩 メルティング・ポイント Copyright たりぽん(大理 奔) 2007-05-19 00:02:01
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