名はない、それでいい
たりぽん(大理 奔)

誰にもおそわらないのに
赤を「あか」と感じたり
風を「かぜ」と感じたり

誰も教えてくれないことが多すぎる
生まれてきたのだ、ということも
きっとそうだ

記憶を移しただけで
生まれるものがあるだろうか
あいつを「きらい」と感じたり
あなたを「すき」と感じたり
それは記憶ではないから
その瞬間の手触りを
だれにも記録させない

誰にもおそわらなかったから
誰にも教えない秘密
この温もりと孤独
私という果実は
ひっそりと地面で潰されて
だれかが
「あか」といったり
「あお」といったり
するのだろう

誰も知らなくても
また、葡萄であるように




自由詩 名はない、それでいい Copyright たりぽん(大理 奔) 2007-05-16 00:58:53
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