腹上死
虹村 凌

おしずかに!おしずかに!
きぇ〜い!
勘定奉行におまかせあぁ〜れぇ〜いぃぃぃっ!
んんっ
失礼
んほんっ


ビニール製のナース服を着た女が
スポットの落ちた舞台の上で立っている
大きく息を吸い込んで
煙を吐き出しながら続ける


海の向こうにある大きな島の
山の向こうの泉を越えて
暗いトンネルのその向こう
メガロポリスの端っこの
空の停車場のその先の
此の世と彼の世の狭間で揺れる
それがこの店「沈黙クラブ」

お客様
そこのお客様で御座います
ようこそいらっしゃいました
居眠りですか?
居眠りはおやめなさい
戻ってしまいますよ
お客様
聞いていらっしゃいますか?
お客様
居眠りはお止め下さい






ふと目覚めると
病院のベッドの上にいた
母が脇で泣いている

あぁ
危うく腹上死するところだったんだ
いや
腹下死させてしまったんだ
どうしたものか

まぁ母さん泣かないで
娘さんの事はごめんけど
折角だから
どうですお母さん


自由詩 腹上死 Copyright 虹村 凌 2007-05-12 20:56:56縦
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