恋月 ぴの

地獄の沙汰どころか
こうやって生きているときから

あの人は言った

ひとと獣の違い
それは
困ったときに
頼れるものがあるかないか

思いとか信じるとかのことなの

そう尋ねた
わたしに
あのひとは寂しげに首を横に振った

困ったときに頼りになるのはね
魂を売ってでさえ欲しいと思うもの
ほかの誰かを貶めても手に入れたいものさ

そんなんじゃない
生きるためにはもっと大切なものが在るはずなのに

あの人は
そんなわたしに微笑んでくれて

何だか南の風が吹いてきた

ひとと獣の違い
それは

誰かのために涙を流せる優しさと
よく晴れた日の抜けるような眩しさと


自由詩Copyright 恋月 ぴの 2007-05-11 21:27:06
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