背中
千月 話子
赤い夕日が広がって
誰かの背中が燃えている
ゆっくりとオレンジ
急ぎ人が赤々と
今日の日よ さようなら
夕食の炎と共に
醜い私達 燃えてしまえ
赤い夕日が広がって
誰かの背中で花が咲く
あまりに美しいから見続けた
私の白目が燃えている
赤い花びらが散らないように
背骨の茎を折らないでいて
夕焼けを歩く私 夕焼けを歩く
隣の家のお姉さんが
庭で ちろちろ と燃えながら
タンポポの綿毛を ふ と飛ばしているよ
頑なに白を示す種も
浮き上がれば 夕焼け火の粉
私達が遠い国から順番に燃えていく
「彼女の背中を見てはだめよ」と母が言う
お母さん あなたも燃えているじゃない
体中が ふつふつ と 燃えているじゃない
醜いものは 誰が決めるの?
皆 夕日で燃えているのに
金色の朝日が広がって
可愛いお花が おはようを言う
光りが欲しい 光りが欲しいよ
空を仰いで 揺れている
カーテンの隙間から射す薄い光り
私達の程好く丸い背中に絡まる
まだ ほどかないでいて
金色の朝日が広がって
水面にさざ波は立ち
いいえ あれは朝花の散った跡
咲き誇るのが早過ぎて
誰も見てはくれないから
朝顔よ あなたにあげる
一番最初の花の 名前を
朝焼けに眠る私 朝焼けに眠る
隣の家のお姉さんが
赤ん坊を産んだ朝
2人して繋がったまま赤く燃えている
泣いたら愛しい 血だらけでも可愛い
光りから降りてきて 光へと進む子供
「背中に羽根が生えているみたいね」
と 母が言う
お母さん 私達も出会った頃は
2人して 羽ばたいていたね
私は飛ぼうとして
あなたは抱き締めようとして
一生懸命 羽ばたいていたね
美しいものは 誰が決めるの?
皆 朝日で輝いているのに
自由詩
背中
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千月 話子
2007-05-08 23:00:26縦