麦藁の少女 
服部 剛

休日の静かな午後 
図書館で借りた
図録の頁をめくっていた 

今は亡き画家が 
キャンバスに描いた野原に 
ぽつんと立って 
空っぽのざるを両手で持ち 
木苺の実をせがむ少女よ 

麦藁帽子で影になった 
物憂げな瞳でこちらを見ても 
きみの世界に
わたしの手は届かない 

遠い背後に 
ほら 
無数の木苺達が 
野を吹く風に揺られ 
唄っているよ 

こちらばかりを見てないで 
振り返り 
無邪気に野原を駆けてゆき 
きみを待つ木苺達の唄を 
つかまえてごらん 

遠く 
小さくなった少女の背中 
我を忘れて実を摘む 
 
振り返り
再びこちらに
駆けてくる 

手にした
図録の頁を開いた
わたしに 
手の届かない野原から 
嬉しそうに両腕をのばす 
少女 
ずっしり実の入った笊を 
こちらに見せて 








自由詩 麦藁の少女  Copyright 服部 剛 2007-05-06 22:37:24
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