山翡翠
はらだまさる






八十円切手を
丁寧に千切りながら、考えていた
軽四輪だったかどうだか
切断された偉そうな記憶だけが
粗大ゴミみたいに

音、

みいいんって
ああ、またかまただ
レンズの欠けた眼鏡を二年もかけてると
偶に風景の端っこが
溶ける

少し
はいいろに、はいいろに
いろは に

唾つけてこすると
もっと溶ける

案外
世界ってやわらかい

鳴いてる、
鳴いてるのは雲雀だっけ?
ツバメの鳴き声なんか知らない
山肌に生茂るシダしだ
シダ植物はふらくたるで
眩暈  がする

すぐに鳥に
なろうろうとする、鳥はは
知らない、知らない
切手にに描かれた鳥は
何て名前だろう
しらねえ


何何もの
にもなりたくたくない
どんな何ものにも

政治的
経済的な
空が覆い被さって
夜が冒され
歩行者道路に
歩行者道路に
うず、うずくまり
全部を

「」する

切手も
ツバメも
シダ植物も

溶ける
風景の端っこが


みかんの汁、汁で描かれた
年賀状を炙る、
炙る

出て来い、
大吉

レントゲン写真や
骨折してギブスしてる友達に
憧れた

雲に
なりたかった

流されて
形を変えて
消えて


「どうでもいいじゃねえか」
という魔法で

溶ける

栗東の新幹線新駅には
反対の反対の反対だ

ポテトチップスは
カルビーのうすしおだ

この電子や
その電子があれば
新緑色をした八十円切手は、
切手の鳥はほとんど
鳥は鳴かないし
飛ばない


たいせつな記憶も
溶ける


消える


八十円切手の鳥、


山翡翠、
やませみ、
だってさ

はいいろ、に


軽四輪、


唾つけて

こする





「」する









自由詩 山翡翠 Copyright はらだまさる 2007-05-01 23:02:30
notebook Home 戻る  過去 未来