葉leaf

鉛筆の一側面の上半分が
白く光を反射している
右目で見たときと左目で見たときでは
白い光の領域が違う
僕は透明な手を鉛筆へと伸ばすが
途中で疲れて手は霧消する
鉛筆が置かれてあることと
僕が詩を書くことは
たぶん同じことだ

老眼鏡越しに見る
紙の上の太い文字は
ゆがんでいる
僕の心にはむら熱が生まれて
それを仮に「苛立ち」と呼んでみる
ゆがんだ太い文字は
苛立ちを介して
僕の感情のなめらかな部分を
どこまでも遠くへと追っていった
そのことによって
感情の経路は磨き上げられた

障子の格子が
あまりにも秩序だっているので
格子が欠けた部分がとても美しい
母親が洗濯物を干している
僕は障子越しに些細な出来事を話す
障子は
自分が存在していることを忘れているから
声や光を通すことができるのだ
だから啓蒙された障子など要らない

絨毯は何も支えてなどいない
むしろ絨毯に載っているものによって
上から支えられているのだ
絨毯は本当に平坦なのか不安になって
炬燵や座布団やスピーカーに邪魔されながら
目で絨毯をくまなく観察する
だがそれでもまだ不安で
実際に手で触ってみる
やっぱりでこぼこしていたよ
そのでこぼこに
哲学やら文学やらしかつめらしいものを
当てはめてみたら
案外ぴったり当てはまった

一円玉はあまりにも軽いから
誰もがその重さを知っている
僕ももっと重くなれば
軽さが分かってもらえるのかな
一円玉が二枚重なっていると
二枚の間に複雑なすきまができる
この複雑なすきまを見ようとして
二枚をはがしてみたら
すきまがなくなってしまった
目も手も役に立たないことが分かった
そこで僕はすきまのにおいをかいで見る
すり合わせて音を聞いてみる
でも複雑なすきまを知ることはできなかった
複雑なすきまは至るところにある
政治学の世界にだってある


自由詩Copyright 葉leaf 2007-04-29 09:59:15縦
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