雨を許すと濡れてしまう
たりぽん(大理 奔)

臆病者だけが
乾いている
磁石のにおいの
ひどい穴ぐら
窓の外では
アスファルトが
黒曜石に濡らされている

  仕切の向こうの笑い声が
  うるさくてちょうどいい
  そんな時刻は
  誰もが臆病者
  水槽の境界面で探す
  車輪の雨を踏む音
  傘が雨を許す音

逃げ出せない夜だ
こんな雨の
今夜抱く
そのひとを秒針に数え

  乾く、バイオリンの空洞
  スピーカーコーンの表面
  古く張り付いた頁

磁石の匂い!
乾きすぎた
臆病者が
水溜まりを
、雨を許す
水溜まりを踏んで
取り戻しながら失う

  湿った果実
  薄皮につつまれたまま
  窓に映る
  窓に映す





自由詩 雨を許すと濡れてしまう Copyright たりぽん(大理 奔) 2007-04-25 23:51:36縦
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