一雫
山中 烏流

むきになって
取り繕った一雫、が
忘れ去られた今
ようやくチクチクと
棘を
発生させて
 
忘れるな
忘れるな、と
声を上げている
 
(ように、感じる)
 
 
洗濯機に
放り込む、前に
もみ洗いを忘れてしまった
から
 
まだ
残っている
 
そして、棘と
 
(痛みは、ないのだけれど)
 
 
零れ落ちた
その雫は
 
寂しいだけ、
なのだろうか。
 
 
(ヒトリニ、シナイデ)
 
 
今更
声を上げている
 
孤独と
仲間を知った
今、だからこそ
 
主張している
 
 
空っぽの
一雫から
紡がれる言葉が
刺している
貫通、していて
 
(忘れるな)
 
痛みは、ないのだけれど
ないの、だけれど。


自由詩 一雫 Copyright 山中 烏流 2007-04-24 02:10:26
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