恋月 ぴの

あなたに似ている
と。言われたくありませんでした

わたしはわたしに過ぎず
あなたのクローンではないのだから

あなたがいなければ
生を授かることはありませんでした
それだけは否定できないこと
あなたがいたから
今日のわたしがいる

母と子の関係とは異なる
あまりにも希薄過ぎる繋がり
電線に絡まったままの凧糸のように
春の風に所在無く棚引いては
最後に会話を交わしたのはいつの日だったのか
そんな想いに暮れなずみ

青白い塊となった
あなたの体が
暗い隊道の奥深く押し込まれ
こちら側と
向う側を隔てる扉が硬く閉ざされたとき
帰らぬひとよと涙を流しました

誰かが確かに生きていたという痕跡を
鉄箸で摘んでは白磁に納める
葬儀と言う名の儀式に拠り
ひとは無と朽ち果てることを赦免され
白磁の温かく緩やかな時の流れに
あなたのこころは
母の胸に抱かれし幼子となる


自由詩Copyright 恋月 ぴの 2007-04-13 22:21:31
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