腐った蜜柑の周囲の蚊の飛翔によって悪夢から目覚めた3秒後のうた
虹村 凌

土曜日のパーティーで会った女の子に
もう二度と会えない気がして
目を覚まして起き上がる
重たく疲れる夢の影が足元まで伸びていて
遠くのネオンが照らし出すのを黙って眺めている

背中にシーツが張り付いたまま
コンプレックスの数を数えて苦笑う
何時も深爪なのはきっとその所為だと思う
午前零時まであと二分
ベッドの下の埃の浮かんだコーラを飲み込んで呟いた
膝が笑っている

ベッドから身体を起こす
悲しい噂が17件
脅迫電話が18件
いたずら電話が22件
留守番電話に残ったまま
東京タワーの天辺の
赤い光と同じリズムで
オレンヂ色がチカチカしてる

長い間 夕日を見ていない

あのラヂオ番組まであと二分
汗を流そうとシャワーを浴びてたら
排水口と目が合って離れない
全てを飲み込む深い穴は
スプリングの壊れたベッドで寝た
何時かの誰かの目とよく似ていた
赤 白 黄色を飲み込む暗い穴は
開ききった瞳孔によく似ていた

気付けば夜明けまであと二分
珈琲とミルク混ぜながら導火線に火をつける
長い事 沢山の朝焼けを見てきたけれど
こんなに焦げて苦い朝焼けは初めてだった

道行く人の数にあわせて
もう一度コンプレックスの数を数える

阿呆くさい
ベッドに戻って抱いて眠ろう

馬鹿な…こんな死に方が…


自由詩 腐った蜜柑の周囲の蚊の飛翔によって悪夢から目覚めた3秒後のうた Copyright 虹村 凌 2007-04-11 13:36:49縦
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