光る野
ダーザイン

その日の雨が
今でも時々僕の肩を濡らす

廃園の木下闇に
置き忘れられたブリキのバケツ
松葉を伝い落ちる雫が
想いおこさせる
もうひとつの心臓

眠れぬ夜毎
消え残る雫がほのかに光り
再び落下していく
夜の底へと

今でも時々
僕はあなたに語りかけています
僕はどうにかやっていきます
心配はいらないよと

小糠雨の降る森の小路は
稜線へ至るにはいまだ遥かに遠く
薄暗い唐松林の奥深くへと
鬱蒼と茂る下草に足を濡らしながら
なおも途切れがちにたどられていく

何処から来たのだったか
何処へ行くつもりだったのか

頭上で漆の葉が赤く染まる すると
唐突に視界が開け
僕は小さな草原に立っていた

雲の割れ間から
一筋の日の光が差し込み
日に映える野

ススキの穂が風にそよぐ

透けるような藁色の明るみの中で
遅咲きのコスモスが一輪
風にふるえていた


自由詩 光る野 Copyright ダーザイン 2004-04-28 14:30:22縦
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