水と眠り
木立 悟




閉じかけて
影はすぎ
片目だけの
花が咲くほどの
遅いまばたき


まぶたの裏に葉音があり
色のかたちをくちずさんでいる
散る花 咲く花の響きがあり
手のひらを隠し
手のひらを呑む


鳥が
古い木をふりかえる
火があり
音を染めている
遠く 揺れている


午後は指のようにひらき
そのうちのひとつが陽に触れる
花はまぶたに重く
根は葉とともに背をめぐり
鳥は片目のそばにいる


沈む音があり
地と空は近く
流れの底を曳かれる光
波打ち際の手のひらの跡
消えても消えても現われる


あふれるものは川へ
こぼれるものは器へゆく
鳴るものは眠りのまわりに鳴り
ふたたびひらこうとする遅さの上に
羽と夜は落ちてくる













自由詩 水と眠り Copyright 木立 悟 2007-04-06 23:57:25
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