セヴンブリツヂ
虹村 凌

海も山も陽も街も
自分も俺も全部嫌いな勝手な女が言ってたんだ
「あの橋は河を渡る為にあるんじゃない。
 あの橋は河で溺れる為にあるのよ。」
最初は何を言ってるのかてんでわからなかったけど
最近は何となく理解できた気になって橋を眺めてる

春も夏も秋も冬も
自分も俺も全部嫌いな気紛れ女が言ってたんだ
「みんな東京が汚いと云うけど嘘よ。
 色々な欲望がキラキラ渦巻いてキレイだわ。
汚いのは文明の発達の所為で切れなくなったシガラミよ。」
少し困ったような顔をした彼女は
窓から煙草を投げ捨てると
携帯のメモリーを全て消去した
橋の向こうで街が笑ったように見えた

白も黒も黄も中間色も
自分も俺も全部嫌いなヤクザな女が言ってたんだ
「あの橋はまるでトウキョウのショウチョウね。
欲望がギラギラ光ってるみたい。」
窓から飛び出た手首は空を舞って
虹の中に落ちて転げた
気がつけば埃舞う助手席には薄い月明かりが差し込むだけ

目がさめれば猫がいない
きっと今頃誰かのミルクを飲んでるだろう
行ってらっしゃい
好きな時に好きな処へ
死にたくなったら帰っておいで
全部思い通りになっちゃうかもよ
喉をならしてドアを叩いて
みゃおみゃお
綺麗な爪を折らないようにね

朝焼けが部屋のドアをノックする頃に
あの橋に行こう
渡る為じゃなく溺れに行こう
僕らの色はどの色だろうね


自由詩 セヴンブリツヂ Copyright 虹村 凌 2007-04-05 14:09:11縦
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