真純。
もののあはれ

換気扇の音が気になって眠れないよ。
そういう君のいびきは換気扇の音よりはるかに大きかったけど。
僕は換気扇を止めてベランダで煙草を吸ったんだ。


角を取るなんてズルイ。
そういう君には一度もオセロで勝てなかったけど。
僕は君の色に染まれるならいいやと思いベランダで煙草を吸ったんだ。


枝豆大好き。
そういう君が止め処なく枝豆を食べ続けるから。
僕は真剣に枝豆になる方法を考えながらベランダで煙草を吸ったんだ。


あなたのって結構薄いね。
そういう君が味の違いが分かる様な人生を送ってきたのだとしても。
僕らの人生には何にも関係ないやとベランダで煙草を吸ったんだ。


怖い映画は嫌い。
そういう君がドラえもんの歌を歌い怖さを紛らわそうとしてるから。
僕はきっと来るきっと来るって歌いながらベランダで煙草を吸ったんだ。


来年も一緒にみれると良いね。
そういう君の瞳に映る花火がとてもキラキラ綺麗だったから。
僕は然程美しくない多摩川を眺めながらベランダで煙草を吸ったんだ。


名前が一文字違い違いなんて面白いね。
そういう君の名前が真純っていうのは。
僕の真という名よりもっと純なんだと思いベランダで煙草を吸ったんだ。


どうしたらいいのか分からない。
そういう君の涙が目に沁みたから。
僕はこみあげる怖さを打ち消す為にベランダで煙草を吸ったんだ。


近くに居てくれないとやっぱり駄目みたい。
そういって君が遠く離れることになった僕に別れを告げたから。
僕はこれから続くはずだった一生分の君への愛を
煙草の煙に織り交ぜてベランダから春空にふっと吐き出したんだ。




久しぶりだね。
そういって君が結婚したという手紙をくれたから。
僕は今よりきっと真っ直ぐ純な気持ちだったあの頃を想い出し。
止めてた煙草を久しぶりにベランダで吸ったんだ。









自由詩 真純。 Copyright もののあはれ 2007-04-03 00:34:10
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