一番星は二度落ちる
虹村 凌

がしゃん できない


床に広げられたポップコーンを拾い集めて
窓から投げ捨てると
バターがきらきら光って
まるで星みたいだったんだ

いつ渡したって誕生日プレゼントさ
と強がってみたけれど
あのペンダントはテレビの上で埃を被っている
何度か星にしそうになった事は誰にも言えない

今夜は何回星を撒いただろう
綺麗な星がきらきら光る
初めての一番星が光って落ちる
誰も知らない一番星が光って落ちていくよ

が がが がしゃん

そうだ
この箱に夜を詰め込もう
髪の匂いもその冷たさも
全部詰め込んで送ってしまおう
しばらく夜が来なくたっていいさ
もう星をばら撒く必要も無い

綺麗に皺を伸ばして
箱の隅にぴったりとくっつくように
綺麗に折り目をつけておく
夜はすぽんと箱の中に納まって
小さな箱は宝箱みたいに光っていた

がしゃん されないように
気をつけてテーブルの上に置いておく
明日の朝一番でこいつを送ろう
要らなかったら捨ててくれ
夜を取り出して空に投げてくれ


白夜が続いたある夕方
影が長く長く伸びて
手を伸ばして家のドアをノックする
急に空が冷たくなって
嗅いだ事のある匂い
空一面が青黒くなった

がしゃん



自由詩 一番星は二度落ちる Copyright 虹村 凌 2007-03-31 14:11:00
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