東京日記 33歳
馬野ミキ

朝-
電車に乗るときの
皆のあの私座りたい俺も座りたいというオーラがいやで
先に乗り込んでも窓際とかに立ってしまう
ヨーイドンとか言ってないのに競争しだすのがいやだ
ルールが明文化されて誰かがヨーイドンと言えばいいのに。
そうしたら俺も一位になるようがんばれる。
四つの路線を乗り継いで現場へ向かう
交通費は1000円までしか出ないので交通費的にこの現場は赤字だ
JRと私鉄と地下鉄を最初から敷き直すとしたらどうするか考える
なかなか難しい問題だ
このまま遅刻したら今日このまま仕事休んじゃおうかと思ったけれど間に合って朝礼に参列した
鉄のバケツに入っているねずみ色の液体をハケで外壁のタイルをはがしたところに塗る、
という仕事をした
このように建築の派遣業において
自分が一体何をしているのか分っていないということはよくある
現場というものはいちいちに説明がなされるほどのんきな所ではない


昼-
幹線道路をどこまでも歩く
ドブネズミみたいにアニマルになりたい
写真には写らない動画みたいな動きがあるから
という歌詞を歩きながら考えた
埼玉のいいところは路上で煙草が吸えるということだと思う
サイゼリアで地元の女子高生たちとカルボナーラを頂く


3時-
休憩時間は寒いので早く終わって欲しい


帰途-
何駅にいるにしろ
その駅のなかで一番今から何かしでかしそうな奴を見つけてしまう
必ず目があうので遠巻きにしながら壁に隠れて逃げる用意をしている
中吊り広告を見ながらほぼ毎日コピーライターVS詩人という企画を考えるが
家に帰ると疲れてしまっているか
他に差し迫った用事があるか
実はそんなに楽しくないことなのか或いは忘れているかでやらない
クーレンズの世界トップシェアブランドとか
中国とインドで一番売れてりゃトップシェアブランドじゃん、みたいな
コピーライターの技法とやりくりを台無しにしたいとか
でもこれは俺のなかのすねた気持ちであろう。


未詩・独白 東京日記 33歳 Copyright 馬野ミキ 2007-03-15 19:16:41
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