桜の季節としゃぼん玉
恋月 ぴの

嫌になるときだってあるよ
そう言うと
友だちは笑顔でうなづく

さほど広く無い部屋に
ふたつ机を並べ
四十六時中
お互いの気配に触れ合って過ごす

それでも机と机を隔てる
背の低い衝立が
彼と彼女の世界をやんわりと隔てあう

あれだよね
それぞれの陣地ってことかな
それとも。秘密基地

あの頃の秘密基地
ベニア板で囲っただけの狭い空間に
男の子たちと一緒になって
肩を寄せるようにして
ガキ大将を気取っていた

廃材置き場の片隅を
桜の季節は薄紅色に染め上げて

弱いものには
弱いものなりの居場所はあったよね
洟垂れ小僧のあの子がさあ
こんど小学校の先生らしいよ

SOHOたって
定期収入なんてあるじゃなし
ふたりして
いつ失業しても可笑しくないしさ

それでも彼女は楽しそうだった
衝立の向う側には
彼女の世界とは確実に異なる世界が息づいていて
ちょっかいだしたり
だされたり

ふわりふわりとシャボン玉が
ふたっつ。
くっついてみたり
離れてみたり
春の陽気に誘われ飛んでゆく

こんにちは。もうすぐ桜の季節だね


自由詩 桜の季節としゃぼん玉 Copyright 恋月 ぴの 2007-03-10 21:10:08縦
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