「 おれ。 」
PULL.







教室に戻ると、
机がなくなっていた。
みんなぼくに背中を向けて、
くすくすと笑っている。
すごく笑っている。
いつもの光景。

誰かが振り向いた。
なにか言った。

ぼくは、
そいつを殴りつけた。
殴り続けた。
なにか言っていた。
なにも聞こえなかった。
躯が熱い。
吼えていた。

気が付くと手が痛くなっていた。
鼻から血を流したそいつが、
「もうやめてくれ。」
そう言っていた。
泣いていた。

構わず殴った。
殴り続けた。

取り囲まれ、
後ろから羽交い締めにされた。
腹に膝蹴りを喰らう。
血の味がした。
みんなは笑っていた。
楽しそうだった。
楽しくなった。
ぼくは笑っていた。

後ろの奴に、
後頭部で頭突きを喰らわす。
ひるんだ隙に、
そいつも殴った。
前歯が拳に食い込む。
肉が抉れた。
痛くなかった。
誰でもいい。
目の前にいる奴に拳をぶち込んだ。
もう誰も笑っていなかった。
おれだけが笑っていた。


その午後、
ぼくはおれになった。












           了。



自由詩 「 おれ。 」 Copyright PULL. 2007-03-06 16:57:00
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