それからのたわし
たもつ

たわしはもう
わたしのことなど忘れて
海に帰ってしまった

たわしのかわりに
いわしで風呂の掃除をすると
少し生臭かったけれど
自分も海に帰れたような気がして
そのような気がして

居間には何も飾られてなく
今まで何が飾られていたかなんて
誰も気にしないような
そのような春の風が吹いて

壁に書き残された「さよなら」という
たわしに似た文字を
私は指でなぞっている



自由詩 それからのたわし Copyright たもつ 2003-08-11 15:53:15
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