響漣—三つの声源による—
輪橋 秀綺

(?)
見えないかれらへのしつもんじょう ぼくより


幽霊 彼は
この世のどこかにいるのですか

幽霊 彼は
あの世のどこかにいるのですか

この世とは どこからどこまでで
あの世とは どこからどこまでなのですか

幽霊 彼女は
この世のいつかにいたのですか

幽霊 彼女は
あの世のいつかにいたのですか

この世とは いつからいつまでで
あの世とは いつからいつまで続くのですか

ぼくのこの言葉は
カミサマ 貴方の元へ届くのでしょうか

カミサマ 貴方は
どこかにいるのですか

カミサマ 貴方は
いつでもいるのですか

  幽霊は やはり死ぬものでしょうか
カミサマも やはり死ぬものでしょうか

カミサマが死んだなら
ぼくも死ぬのでしょうか

ぼくが死んだなら
世界が死んでしまうなら

幽霊もやっぱりいなくなるのでしょうか



(?)
風漣―注視への


神社の鐘の音が響いている

僕は
僕の魂を見たことがない
僕は
僕の幽霊を見たことがない
僕は
僕の神様を見たことがない

僕は
僕は本当にいまここにいるのだろうか

風が頬までやってくる
見えないものを信じさせるために


風が 吹いてきた方では
ウソがホントウになり

風が 吹いていく方では
ホントウがウソになる

風が渦巻いて
  常識になって 
また
風が渦巻いて
  非常識になる


(?)
祷り―饗応への


風の背鰭に跨って遠くから
列を成して滑空する鎮魂歌

信じる―ただそれだけで
神様 あなたはそこにいる

信じる―ただそれだけで
幽霊 あなたもそこにいる

人々が謡う 答が聞こえる
誰かが頷く かぶりを振る


幽霊も神様も、祷りだとしたら。

私は殆ど自発的に、
信じる、と呟いて。
世界が諺になる瞬間を見つける。








自由詩 響漣—三つの声源による— Copyright 輪橋 秀綺 2007-03-01 21:35:59縦
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