青、紫、明け方の、匂い
虹村 凌

俺の片目は何時も赤いけれど
何故か知ってるかい?
兎みたいに
寂しいと死んじゃうんだ
知ってたかい?
と言うと

君は心底可笑しそうに笑って
それじゃあ
鏡の中に映るあなたは
左目が赤くて
実際に左目を閉じたら
全部赤くみえるのね
と言って
俺の左目を手で覆い隠す

窓から立ち昇る明け方の匂いが
真っ赤に染まって行くのが見えた


明け方前に迎えに行くから
一緒に朝を迎えよう
どこか遠くで
うんと遠くに行って
世界を始めよう
と言うと

君は心底可笑しそうに笑って
バイクも車も無いから
歩いて向かえに来てくれるのね
間に合うかしら?
無理しないでね
と言って
煙草の煙を吐き出した

今でも優しくなれるよ
と言い掛けて言葉を飲み込んだ
窓から立ち昇る明け方の匂いが
青と紫で綺麗なマーブル模様を描いていた

立ち昇る青と紫の煙が
消えてなくなるまで眺めていた


自由詩 青、紫、明け方の、匂い Copyright 虹村 凌 2007-02-27 12:25:22
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