巡礼
水在らあらあ




人がいなくなって
街はしばらくざわめいてあきらめて
そうして日が暮れた 
ある冬の日

おれはおまえを探している
茶色い瞳は星と月だけを頼りに
上を向いた鼻はおまえの匂いをたどって
唇は おまえの頬を夢見て

人がいなくなって
俺は獣になって
おまえは目を覚まさない
お風呂の中で

夢のない眠りを眠っている
蝋燭が燃え尽きる
それを待って朝が訪れる
朝日に敏感なおまえは薄く張った氷のような眠りの中で


 人がいなくなって
 世界が滅びたら
 あたしあなたを連れて
 巡礼に行くわ
 あなたはゴリラで
 あたしはスワン
 あたしは踊って
 あなたはなにか食べれるものを探すの
 水溜りは
 お姫様だっこで渉ってね
 荷物は少なくていいの
 強くしなやかに行くの
 強くしなやかに生きてゆくの
 そう
 心からおもえば
 心から願えば


朝日がおまえの長いまつげに休んで
虹を灯す
冷めたお風呂の水を
懐かしむような手つきで
おまえは掬う

人がいなくなって
俺は獣になって
おまえは薄い氷のような眠りに
明け方の夢の中に眠る
冷めきった
お風呂の中で









自由詩 巡礼 Copyright 水在らあらあ 2007-02-23 09:23:35縦
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