冷奴
水在らあらあ






街路樹に抱きついて愛情をほしがる
そうしておまえは湯豆腐が食べたいって言う
俺は冷奴が食べたい
おまえの肌のように白く冷たい

交差点がわめき散らしている
スピーカーつきの羅針盤
気がふれて あらゆる方向に
あらゆる季節に

行こう ゆこう もう
夜の都会はおまえを容易く抱くだろうが
そこに愛情なんか
そこに愛情なんか

あなたの手
湯豆腐みたいに熱いわ
おまえの手
冷奴みたいになめらかに

しずかに
ないて
ぬれて
こごえて

街路樹の下に猫が丸くなって目を閉じて
だからそこは安全なんだ
それにしたっておまえには少し狭すぎる
おまえのお尻にはもっと大きな大地が似合う

いつも冷たい冷奴のようなおまえのお尻には
もっと大きな大地が似合うんだ
それを探しに行こう
みずみずしく 熱い大地を

交差点がわめき散らしている
ものすごい涙だ
ギター弾きがわめき散らしている
それだけのことを初めに自分の中でわめき散らしたのか

まあそんなことはどうだっていいぜ
俺は冷奴が食べたい
おまえは湯豆腐が食べたい
おれ達はお互いを

食べたい
食べちまいたい
ネオンの中で
交差点の涙に

ほんとうはもうどこへも行けないから
今すぐここで
ネオンの中で
交差点の涙に

湯豆腐さん
暖めて
汗っかきさん
醤油なんかいらないわ

冷奴
おまえの手
おまえのお尻
その冷たさで

俺を なぶってくれ 
俺を 慰めてくれ
俺を
俺達を 

泣いてくれ








自由詩 冷奴 Copyright 水在らあらあ 2007-02-23 07:06:27
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