詩にはしない〜市村マサミに捧ぐ
山内緋呂子

市村マサミのライヴを見に行く。

一つ目のバンドが夢いっぱいスイート丸出しなのでつまらんくて携帯で詩でも書く。

もともと音楽など好きでないのだ。

ドラムばっかり見てしまう。断言するが尊敬と愛を込めて言う。大介は馬鹿だ。神みたいなドラムは大介しか見たことがない。あたしが80過ぎまで生きて、その間、他に一人でも見られたら可。
でかい音を聞いて、逆にそれまでの頭痛が治まる。不思議なもんだ、ライヴってやつは。

マサミ登場。
繰り返すが自分は音楽を長いこと聴いてられんのだ。その間に、何かできるんじゃないかとソワソワしてしまうのだ。しかし、マサミのライヴは、もっともっと聴かしてくれ、と思わせるライヴだった。目の前で歌ってくれるのだ。当たり前か。
奴は、アーティストだった。
アーティストなど、なろうと思ってもなれないもんが多い。でも奴は、アーティストにしかなれない奴だった。

「醜形恐怖の女がよう」
「便所の天皇」
「君に出会えて」

マサミのことを、ネット詩でしか知らなかった。
「天然果汁が降ってくる」なんて、詩で読んだら笑うところなのだ。
でもマサミは歌った。
まるでマサミの詩特有の滑稽さではなかった。どうしようもなさが、マサミの上に、天然果汁となって強く降り注ぎ、刺さるのだった。

全曲歌い終わった後、「やめさしてもらうわ」で、マサミは去った。


何も言葉が出なくて、マサミには、「この気持ちを後で詩にするわ」と言ったが、それは無理だと気づいた。
・同じ時代に生まれていてよかった
・アーティストだと思う
・小さいゴミ屑の中の天才だと思う
とか、簡単に素直に、褒めるしかできなかった。

マサミの歌を聴いて、詩にするなんてできない。
詩に、できる人もいるだろう。
でもあたしは、詩にできなくていい。詩人と呼ばれなくてもいい。今日、マサミの歌が聴けたから。


マサミの歌を、聴いた。
確かに聴いてしまった。確かに、眠れなくなってしまった。


散文(批評随筆小説等) 詩にはしない〜市村マサミに捧ぐ Copyright 山内緋呂子 2007-02-21 03:24:45
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