ニュー/ヒア
nm6

ニュー。ニュー。
新しくなることについて考える昼すこし前の柔らかい光だ。


上着のポケットにしまっていた石を垂直に投げる。加速度と重力。そう、加速度と重力がせめぎあうその瞬間の曇り空に、押し付けの幸せはない。インド洋の端にも沈む太陽のことだ。ぼくらはいま涼しい東京で、悪い気はしない。ところで空中での出来事は、押し合い圧し合った結果、あるところで頂点を極める。きっと明日は夕暮れて、きみはしおらしい太陽を慈愛の目で眺めるだろう。その時まで、すべては置き去りだ。ひとつ大きく後回しにしたそれは、垂直にぼくらに降ってくる。すべては運動で、そしてぼくらはひどく気まぐれだ。



五反田の駅のことは、よく知らない。
きっと灰色がかっていて、太陽が浮き足立って馴染まない。
ニュー。ニュー。
知らないものは知らない。



黄色い紙に書かれた矢印は、ことばとことばの間を水平にするりと抜けて、果敢に飛躍していく。どうせドライブしていく常なのだから、いっそこの程度ランダムなほうがセクシーだ。ぼくらはいま涼しい東京で、悪い気はしない。ところで新宿駅の改札の内側は、囲われて動いていくその渦中に、新宿ではなくなる。きっと立ち止まって、歩く人を眺めるときそれは優しくなるだろう。その時まで、すべては置き去りだ。ひとつ大きく後回しにしたそれは、水平にぼくらを叩きつける。すべては運動で、そしてぼくらはひどく気まぐれだ。



見えてこないのなら見ようとすればいい。
見えないうちはここにいればいい。
ニュー。ニュー。
知らないものはイメージすればいい。



ニュー。ニュー。
新しくなることについて考える昼すこし前の柔らかい光だ。


自由詩 ニュー/ヒア Copyright nm6 2004-04-16 08:21:42縦
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