「 ひとがた戯び。 」
PULL.







「裏山に捨ててあった人型あれ誰のかな?誰か人だったのかな?。」




「そう言えば最近姿を見ないけど人なんて他人事だよね。」

「博物館で見た人間の標本おぞましくて吐き気がしたぜ。」


「博物館?。」
「この間の課外授業で行った人間の歴史展。」

「あれだよ人間の滅亡と人間狩り。」
「どんなだったの?。」
「うっげーっ。」
「うげー?。」

「すげえグロくってさこいつマジで吐ちまいやんの。」
「きみだって吐いたじゃないか。」

「バカヤロあれは…お前の付き合いってやつだよ。」
「人のせいにするなよ。」

「本当に仲がいいわねぇあんたたち。」
「いわゆるおれたち腐れ縁ってやつ?。」

「腐ってるのはこいつだけだよ。」
「あーそんなこというやつはこうしてやる。」

「やっわきゃ!やめろよくすぐったいぃ。」
「くぬぅくぬぅーういやつめ。」
「あははもっとやれぇー。」






「人間狩りって…楽しいのかな?。」
「それで滅んだんだから多分そうだよ。」


「それ殺し合いじゃんホント下等生物だったんだな人間って。」





「でもさママが言ってたあたしたちも昔はあんな姿だったって。」





「ホントかな?。」
「本当かも?。」
「それ捏造だよネットでそう書いてあった。」

「もし…。」
「本当だったらどうする?殺し合うのかな?人間みたいに。」

「そしたら誰から殺す?。」
「誰から殺されるの?。」
「おれから。」
「あたしから。」

「殺されるかな?。」
「殺せるかな?。」
「殺されるよりは、」
「殺す方がいいのかな?。」

「あたしを殺したら死んでくれる?。」
「一緒に?。」
「うん。」
「お…おれ死ぬの恐いよ。」

「あたしは殺せるわよ殺してあたしも死ぬのシンジュウしちゃうの。」

「ジンジュウ?。」
「そうジンジュウ人間は神の獣に自分を献げたんだって。」

「献げて、」
「どうなるの。」
「究極の愛を誓うんですって獣になって。」

「獣になるの?。」
「獣になるのよ。」
「獣って…。」
「きっとすてきよシンジュウ。」




「それって殺し合いとどこが違うんだろ?シンジュウだって殺しだよ。」

「バーカそれが解んないから人間は下等生物で滅んだんだよ。」

「みんなでシンジュウして滅んじゃうぐらい人間は愛し合っていたのよ。」




「獣の愛なんていらないよ。」
「そうだよおれたち人間じゃないし…。」








「ひとがた…。」
「あれに入ると人になっちゃうのかな?。」
「なってみたい?。」
「なってみる?。」

「どうする。」
「どうしたいの。」
「だけどさ。」
「だけどなによ。」
「どうなっちゃうんだろう。」

「どうなっちゃってもあたしはあたしよ獣のあたしは嫌い?愛せない?。」

「おれたちだって獣になるんだぜ人間に。」
「そうだよそれでも…ぼく。」


「愛してあげる獣みたいにふたり愛してあげる人間だから。」


「人間だから?。」
「そう人間だから。」
「人間だから愛してくれるのか?。」



「ばか…ふたりが好きだから。」
「だから?。」
「だからどんな姿になってもあたしは、」

「愛し続けてくれるのか。」
「そうよ。」
「変わらない?」
「変わらないわ。」
「愛してる。」

「あたしもよ。」
「あの人型…。」
「あそこに入ればおれたちは、」
「人間に。」
「なる。」






「どうする?誰からいく。」
「あたしでもいいわよ。」
「本当にいいんだね。」
「いいわ。」






「ど…どうなるの。」
「おれにも解んねぇよ。」
「ひとつだけ…約束して。」
「なに?。」
「なんだよ。」




あたしがおぞましい…。
人間の獣になっても愛して、












約束よ。












           了。



短歌 「 ひとがた戯び。 」 Copyright PULL. 2007-02-17 20:02:08
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