レモン海
佐野権太

八角形の小箱は
ブルーウォーターで満ちていて
覗き込めば
ぶちの鞠が回転している

それは
滑らかな哺乳類の群れだ
あるいは
みるく色の
貝類の
ひとかたまりに
溶けて


こうして
他愛のない話にうなずいているときも
小箱は
白い窓辺にぽつんとあって
レースの淡い模様に
まるく洗われながら
遠い海とつながっている


気がつくと
ふたり黙ったまま
見つめている


砂丘のむこうからレモンの海
風に吹かれて
あのときも
そんな目をしていた



ときおり
水のかさなる音がする








自由詩 レモン海 Copyright 佐野権太 2007-02-16 09:44:08
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