能面ヴァレンティーナ
虹村 凌

へらへら笑って煙草吸ってりゃ
明日も御天道さんは昇るのだと
安心しきってるような顔を見せないでくれ

既に恋愛感情は消えてなくなって
そもそも最初からそんな気持ちは無いんだと
安心しきった顔をしているお前
怖くないのか
お前が彫った能面を俺が被って
お前を襲っちまうって事を考えた事は無いのか
俺が人間やめちまうって事を考えた事は無いのか

へらへら笑って珈琲飲んでりゃ
今日も勝手に月は輝くのだと
安心しきってるような顔を見せないでくれ

既に海馬からも消えてなくなった
そもそも最初から覚えてなんていなかったんだと
微笑みながら茶色い息を吐くお前
少しくらい懐かしそうな目を見せてくれ
さもないとお前の能面を被って
お前の能面を被って人間辞めちゃうから

そんな事は起こりえない
そんな目でこっちを見るのは止してくれ
お前が笑っている間に
太陽が砕けて飛び散っちゃうよ
俺は気付いたってお前は暫く気付かない
その間に攫っていっちまう
ヘラヘラしてるお前が見る間に苛々して
綺麗な声が金切り声に変わるのさ

無表情な能面のこっち側から
誰よりも優しい目をしてやるよ
それで最後さ

ヴァレンティーナ
次の日に地球は真っ暗になっちゃったんだ


自由詩 能面ヴァレンティーナ Copyright 虹村 凌 2007-02-12 09:57:28縦
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