「 鬼妙な果実。 」
PULL.







わたしは毎朝目覚めると、
あなたの前で尿をする。
下半身を突き出し、
あなたがそうしていたように、
尿をする。
わたしの尿は、
黄色かったり透明であったりする。
わたしは朝の尿のために、
栄養のあるものを食べ、
飲んでいる。
あなたに少しでも精が付くように、
そればかり考え、
食べている。

わたしの食べるものは時に、
あなたとおなじことばを話す。
おなじことばを話すので、
わたしは時々あなたと間違えて、
それと床をともにする。
それはただ乱暴に入ってくるもので、
わたしはいつも愉しめない。
おなじことばを話していても、
やはりそれはあなたと違う。
わたしは愉しめない。
あなたと違う精は、
ひどく苦い。

一連のことが終わると、
わたしはそれの首を絞める。
大抵はあっさり死んでゆくが、
時折しぶとい者もいる。
しぶとい者は念入りに締めて殺す。
わたしは台所から鉈を取り出し、
大まかにそれを解体した後、
少しずつ食べてゆく。
まずは腐りやすい内蔵、
次に脳。
次々と食べてゆく。
目を見開いて死んだ者の眼球は、
少々硬い。
恐怖の所為かもしれない。

胸骨に取り掛かる頃には、
もう夜は明け、
空が白んでいる。
わたしは食事を中断し、
あなたの前にゆく。
服を脱ぎ、
下半身を突き出して、
あなたがそうしていたように、
あなたに向かって尿をする。
食後の尿は黄色く濁っていて、
わたしはそれに満足する。

尿が終わると、
わたしは大きく足を広げ、
あなたの幹に跨る。
愉しめなかった夜明けには、
かならず跨る。
わたしは擦り付け、
あなたの幹を揺らす。
やがてわたしは溢れ出し、
あなたを濡らす。
あなたは溺れるように、
それを吸い上げる。




あなたが木に消えてから、
いくつもの季節が過ぎました。
いつか実るあなたの果実は、
きっとわたしの尿と、
あなたの肉の味がするでしょう。












           了。



自由詩 「 鬼妙な果実。 」 Copyright PULL. 2007-02-11 08:46:36
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