庭で子どもたちが泣いている
若原光彦

庭で子どもたちが泣いている
ちいちい ちいちいと泣きながら
翼をぱたぱたさせている
それだけで 私ももらい泣く
私は狂ってしまったんだと思いながら泣く

そして何を悲しんでいたのか わからなくなる
わからないことに泣く
辞書で自分をひいて 今日をひいて 自分をひいて
載っていないことに泣く

空は
青くなかったと思うのだ
こんな色じゃなかった筈なのだ
ずっと緑色だったはずだ
手の届く色だった筈だ
それがどうして
冷たい面になっちまった
遠い星になっちまった

青い空に
子どもたちが飛んでいく
私は 絶叫する
そっちへ行ってはいけない
そこへ行ってはいけないと叫ぶ
叫びながら泣く 泣きながら追う
お菓子をあげるからと絶叫する
私の体が
思わず浮く


未詩・独白 庭で子どもたちが泣いている Copyright 若原光彦 2007-02-09 19:37:52
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