ヨコスカ物語
恋月 ぴの

優しさにぶらさがる
重なる星の巡り合わせに
ふたりだけの夜
ドブ板通りの古びたカウンターで
わたしをみつめる
瞳と
Never mind
歯並びの良い口元が闇に浮ぶ
迷路のような船底で
皿を洗っているんだと
あなたは言った
束の間の休日
束の間のやすらぎ
今度はいつ逢えるのと問うわたしに
あなたは
総べてはあの日から狂いだしたのさ
そんなことばを呟いた
海峡を渡る
アッラーへの祈りと
乾くことの無い涙
わたしは知っているよ
ネイビーの胸ポケットには
幸せそうな家族の写真
それでもね
わたしはあなたが好きだから
逞しい優しさにぶらさがり
甲板上で手を振る
あなた
Take good care of yourself
あの青空と
白いカモメに
わたし
きっといつまでも


自由詩 ヨコスカ物語 Copyright 恋月 ぴの 2007-02-07 22:28:25
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