小丘
嘉村奈緒
お三時に彼はハンドルを回し
胸の部分の扉をパカリとひらいて
よい風を招くために
陶器のオルゴールを鳴らした
それは凛とした音色なのだけれど
彼はハンドルを回すことに執心していたので
忙しなく扉が開閉し
しばらく繰り返すうちに
嵐が起こり
陶器のオルゴールは粉々になってしまった
もう風はこないので
彼は扉を閉めて
違うハンドルを探しに出かけた
自由詩
小丘
Copyright
嘉村奈緒
2007-02-07 21:46:45縦