「軽犯罪日記」 面接の練習・前編
馬野ミキ

ぼくたちは客車のなかで汗だくで存在する
ぼくたちは時に自分たちの水分によりとろけてしまいそうになることがある
木々のようにつり革の手前で僕たちはたたずむ
そうしてなるべくスマートに中央口の改札を抜けるということを振舞う
光の街でシティマップに視線を投じるが、ぼくたちにはもう何も見ることが出来ない
一つの確実な事実として面接の時刻は確実にぼくたちに迫りつつあった
スクランブルの交差点で一千人の人々をよけて歩く為にぼくたちはアクロバチックに踊る
その様子を誰も動画に撮らない
ぼくたちはぜんぶの戦争の兵器をはじめから無いもののように隠した
ポケットをひっくり返しても柔らかな砂しか出てこないといった具合に
色とりどりの三色の信号が各地で一斉に点滅をはじめる
ぼくたちは初めにまずてんでばらばらに歩いてから
人気のないところで統合する
エレベータのなかで同時に時計を見る
601号室の扉を開けてぼくたちは皆さんと言語を交わした


自由詩 「軽犯罪日記」 面接の練習・前編 Copyright 馬野ミキ 2007-02-05 23:06:24
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