@ノ”「えいえんをめぐる短詩集」
ダーザイン

「えいえんをめぐる短詩集」


 @ノ”


@ノ”
かたつむりは
えいえんに
えいえんに
たどりつきませんでした

おしまい



 海と空と


何のために生まれてきたのか
海と空とえいえんに触れるため?
振り返ると
淋しさだけがつのります



 夕日のトンネル


今日も夕日がキレイダッタヨ
堤防の上に寝転がったお日様は
まるで
トンネルみたいだったよ
あいつを潜ったら
えいえんにふれることが出来たのだろうか



 影


お日様の上を一筋の雲がよぎった
すると
誰もいない夕べの街角に
茜色の音をたてて
巨大な影が倒れた

えいえんなんて なかった


 抒情で


優しくて暖かなえいえんは何処へいったのだろう
僕はもうくたびれました
えいえんを探す旅はえいえんに決まってるけど
6月の野に咲く花のようなえいえん
インディアンサマ−のようなえいえん
街灯の下の小さな明るみの中で拾った水晶のようなえいえん

抒情で生きていけると思っていた
抒情で自身を支えることができると思っていた
えいえんなんてなかった



 えいえんには


えいえんには
いつでもアクセスできます
デバイス無しで
タクシードライバーのテーマが聞こえてきそうな
朝もやの中すすきのの片隅で
酔いにまかせて飛び込んだ10月の夜の海の底で
倒産したも同然の会社で
いまさら無意味な月次収支を報告したときの
社長の泣きそうな顔の中に
いつまでもねちっこく夢にでて来る死んだ女の面影の中に


 深淵


世界の真中にはぽっかりと穴が開いていて
埋めることも
橋を架けることも
身を投げることもできなかった

えいえんなんてなかった


 地雷の上にも


わんこのむくむくの手触りのようなえいえん
トタン屋根に映った星の光のようなえいえん
あの娘のほっぺのえくぼのようなえいえん
遠い異国の丘の上で地雷の上にも咲いたアザミのようなえいえん
更けていく夜の果てにぽつんと灯る街灯のような えいえん



 アンモナイト


雪どけの沢を登っていくと
あちこちで河岸の白亜の崖が崩れて
時々アンモナイトが転がっていたりもする
ふたつに割れたアンモナイトの房室のなかには
方解石が結晶していたりして

始めてアンモナイトの沢に入った日は まだ中学生だった
あの日からずっと えいえんを探してきたのだな



 お星様


風がさわさわ囁くので
タバコの先に火を灯し
深夜の庭に出てみると
がらんどうの天蓋に
からっぽ闇が映されていました
ねぼすけの神さまが
幻灯機で星々を映し出すのを忘れたようです

えいえんなんてなかった



 約束の地図


琴似2条通りで地下鉄を降り
大交差点に立つたこ焼き屋台の明るみから出ると
地吹雪の流れていく夜の果てに
どこかで見たような人影がひとつ
いまだに立ちすくんでいたので
俺は銀の紙に記された約束の地図をくしゃくしゃに丸めて
山犬のようにうなる風の中にほうってやった

えいえんなんて なかった


 一過性の歳月


久しぶりの雨が世界を洗ったあと
巨大な死の翼を広げた鉄の鳥が
上空をよぎった
銀屋根には真紅のビーコン
夜の女王の指輪が煌く

えいえんという名の
一過性の歳月もなかばを過ぎて
無が触れてくるのがわかります



 カモメ


鉛色の海は静かにないで
茫々と煙る空を見上げると
カモメが一羽
ぴんでとめたように
静止していた

えいえんなんて なかった



 放射冷却


夜はどこまでもふけていくので
星は瞬きもせず見つめているので
放射冷却の朝を迎える前に
遠い所へ心を飛ばした

えいえんなんて なかった



 えいえんなんてなかった


ふけていく夜の果てには
光る石がひとつ落ちていて
その石の中には
小さな心が封印されていて
あなたと出会う約束を
果たせなかった寂しい思いが
流した涙の化石なのです

どこまでもふけていく夜の果てで
薔薇色の石を握り締めた僕は
ひとつの透明な影となって
ひとつのほの暗い明るみとなって
分かたれることのない世界を
呪現しようと思います

えいえんもなかばを過ぎた
遠い岸辺は星々のもと
見知らぬ夜明けを迎える前に
流氷が
軋む音が聞こえています


# ホムペの「永遠短詩集」の抜粋です。
興味を持っていただいた方はこちらの方にもいらしていただけると嬉しいですヽ(´ー`)ノ
http://members.at.infoseek.co.jp/warentin/eientansisyuu.htm


自由詩 @ノ”「えいえんをめぐる短詩集」 Copyright ダーザイン 2004-04-11 14:35:51
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