夕焼けのコロットさん
AB(なかほど)

何年ぶりかに訪れた町は
道路が広げられ
いくつもの大きな店が並び
駅ビルもすっかりきれいなホテルになって
僕の中の地図はすっかり
すっかり塗りつぶさなきゃ
いけないのだろうか
塗りつぶしたい理由が他にあることは
すっかり忘れたつもりで

僕の育った町では
かろうじて残ってはいたローカル線の一部も
全廃止になって
そんなニュースは三日間だけで
田んぼの水入れは毎年のように
陽の光がゆらゆらと
そこに
時計代わりの線路のきしむ音は
田んぼには聞こえてこないよ
もう聞こえてこないんだよ
よんどころなく


全てを忘れることなんてできない
全てをそのままに覚えていることも
もちろんできやしない



僕が住んでいるこの町で
いつも車で通る道を
なにか理由をつけて歩いてみる
探しものなんか無くてもいい
何かを思い出すように
振り返りながら



  


自由詩 夕焼けのコロットさん Copyright AB(なかほど) 2004-04-08 08:32:57
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夕焼けが足りない