ね、夜少年
虹村 凌
お前の髪の匂い
覚えたよ
お前の髪の匂い
覚えたんだ
他の女とは違う
わかるんだぜ
そんなお前に
死んだら何をあげようか
指輪かジッポか
それともこの骨か
何をあげようかね
いらないんだったら捨てていいさ
わがままなお前
いらないものを
いつまでも取っておくような
やさしい女じゃない
***
キちがい扱いもされなかった頃に
覚えたての煙草をふかして
喫茶店の奥のほう
影に怯えて震えてた
闇を待ってでかける
夜少年
影が薄く長くのびていって
はじめてでかける夜少年
甘い缶コーヒーを飲み干して
はじめて家に帰る夜少年
腐りかけの頃に
一番やさしかった頃に
貰った石鹸が今も
机の引き出しに眠ってる
一回もすり減らないままで
一番やさしかった頃
一番腐りかけてた頃
キちがい扱いされなかった頃
***
何をあげようかね
いつか
何かをあげようね
いらないなら捨てていいから
とりあえずでいい
受け取ってくれんか
手紙も書いておこうね
別に読まないでもいいよ
封を切らずにおいてもいい
放っておいてもいいよ
死んだらお前に何をあげようか
ね
自由詩
ね、夜少年
Copyright
虹村 凌
2007-01-18 13:20:37
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