ノーブス・オルド・セクロルム
atsuchan69

世界同時革命の僅か数秒前――
雪の溶けた路面に滲んだ血の色を見下ろす
LED信号機と、旧いアナログの時計台、
やがて爆撃されるであろう
銀行、教会、幾多の官公庁

崇高な思想に値しない愚者ども
街をゆき交う、冬着を纏った女、子供たち

憂鬱な夜を記した
「方法と手段」
 つまり、
善悪を超越した
短絡的な理想への近道‥‥

或いは、
 地獄。
すなわち、
一刻も早く
この世界を終わらせるため

人間という名の
脆弱な端末に上書きされた
純粋な意志、そのもの
きっと最初から、
心など持たない機械が失敗しないように、
引き金に触れる指は
躊躇などしない
ただ単純に、
行なう、
それだけだ

そのすぐ眼の前に、
通り過ぎる幼子じみた女の無垢
やがて燃えるべき筈の街が
 止る。

指と、視覚との関わりに
ゆがむ口元の
――何故だ? 
女は孕んでいる 命を、
あなたの言葉を宿して
清く終わろうとしている世界が
たった今、
彼女とともに泣き崩れて

街中に呪いが降り注ぐ
その最中、
旧き世界の終わりに
――やはり愛している
と、彼はつぶやく
憎しみさえ 何もかも
そしてこの冷たい引き金さえも、

この街のすべて、愚者どものすべてを


自由詩 ノーブス・オルド・セクロルム Copyright atsuchan69 2007-01-17 03:32:51
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