病いが理解できない人たち
クリ


僕が大病して自宅療養してる頃(体重、最低で50キロまで落ちた!)、無理して出かけた帰りの電車、
ちょっと混んでたけれど、もう体力の限界が来てて、どうしようもなく空いてる席に座ったんだ。
そしたら徐々に人が乗って来て、いつのまにか満員。で、僕の前には初老のご婦人。
揺れる。倒れかかる。
座っている中ではどうやら僕がいちばん若いらしい。だって、「おまえ、席代われよ」という無言の圧力。
代わったんだけど、はっきり言って僕のほうが倒れる寸前だった。
しょうがないんだよね。見た目では分からないもの。
ただ、とてもとてもしんどかった。
…というのはあんまり関係ないんだけど…。

僕の知り合いで、軽度の統合失調になった人がいる。
で、そいつの亭主がね、別れるって言い出したらしい。
顛末は複雑なんだけど、僕はとても驚いた。
どうやらいろいろ話を聞くとそいつ、統合失調症が病気だってことを、理解できてないみたいなのね。
で、妻にむかって怒ってるわけ。「態度がでかい、人を馬鹿にする、すぐに切れる、人の話を全然聞かない」と。
他人の家庭の話なんで僕が出しゃばるわけにはいかないんだけど、
頼まれたら殴りにいきたい気分だね。
病気だぞ。例えば、足が不自由な人にむかって「お前はなんで歩けないんだ。頑張りがたりない!」って言うか?? これは極端なたとえだけどさ。
そして、夫婦だぞ、おまえら。子供もいるんだぞ。
もはや人格の問題だ。
こいつは、心の病いを「性格の悪さ」とか「怠け」としか思えないのと、夫婦というものが何なのか分かってない二重の馬鹿だと思う。
知り合いの彼女、治療を初めて少し状態が落ち着いてきたところらしかったのに、とてもかわいそう。
他人事ながらめちゃブルーになったし、めちゃ怒っている。

それから、これは難しいことがらでもあるんだけど、
(鬱と統合失調症を混同しているわけではありません。「理解できない人」のアナロジーとして触れています)
鬱の人に向かって「がんばれ〜、応援するから」っていうのも間違ってる。
彼らは、どうしてか、がんばれなくなってしまったから苦しんでいる。
「がんばれ〜」はやっぱり、歩けないのに歩けって言ってるのとそんなに違わない。
意図的な悪意より、無知の、無意識の、善意が他人を深く傷つけることも、ある。

学力低下は君たちの責任ではない、僕たちの責任だ。ごめんなさい。
でも、「そんなこと知らなくても生きて来たもん」とか「知らなくても生きて行けるだろ」と言うことは、やめて下さい。
君たちが生きていけても、君たちの一言で、誰かが死んでしまうのです。



    2006.01.09 : Kuri, Kipple
    初出 mixi (4行加筆) 詩を書けてなくてすみません


散文(批評随筆小説等) 病いが理解できない人たち Copyright クリ 2007-01-09 01:03:09
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